茶帯トーナメント(引退試合)

いよいよ僕の引退試合が始まる。

高校生の時に読んだはじめの一歩の「強いってなんですか?」のセリフに共感した。強いってどういうことだろう。強いってどんな気持ちだろう。強くなりたい。そう思った。

空手、中でもフルコンタクト空手で黒帯をとれば、強いって言える、僕の定めた基準だ。そう思って、高校1年の後半に僕は近くのフルコンタクト空手の道場に入門した。そこで2年ほど頑張り黄帯まで進んだ。

長野に転居し、現在の空手道場に通い始めた。流派が違うので白帯からだ。
そこで6年ほどかけて茶帯まで進んだ。当時はサッカーもやっていたし、仕事も多かったので稽古になかなか行けないことも多々あった。
それでも帯はあがっていったので、まさかその後8年ほどの間茶帯で過ごすとは思わなかった。。。

黒帯をとるためには年に一回開かれる茶帯トーナメントで優勝する必要がある。他にも手段はあるが、どれも簡単ではない。
毎年試合に出ては、負けた。1,2回勝つこともあるが、優勝はなかなか難しい。
試合に出ることは恐怖だ。無事に帰って来られるか、と。腕やアバラを痛めたこともあるし、後頭部を痛めてCTをとったことも。
出場するだけでも精神的肉体的にハードルがあるなかで、勝ちきるということはさらに技術や体力、ハートが必要だ。熾烈な試合を制して昇段するベテランもいれば、プロを目指すような若者が昇り龍のように昇段していく。
黒帯の人はみなさんカッコいいし、強い。
「自分はそっち側に行けるのか?」「その力があるのか?」と思った。
今は亡き先輩に「コンドゥーなら黒帯とれるよ、頑張れよ」と言って応援してもらった、他にもたくさんの先生や先輩に教えてもらった、鍛えてもらった。すごい先生方に教わっているのに、勝てない自分が申し訳なくも思った。

茶帯で停滞してから、稽古へ行く回数は増えた。また自分でも本を読んだりして学んだ。
マチュアでここまで鍛錬するのも一般人としては珍しいと思った。
仕事終わりに稽古、休みの日に稽古、長期の休みにはさらに稽古。
週2、3回は稽古。そんな日々。

今回そんな日々にくぎりをつける。
これが最後の試合にする。
年齢的な問題等々があり、試合に出るのは最後と線を引いた。

敗けたら引退。勝っても引退。

最近は選手人口も減ってきて、2回勝てば優勝である。
その2回の試合にもてるものをすべてつぎこもう。

1回戦目は179cmの長身の選手。2回戦目はお互い長く茶帯で戦ってきたベテラン選手で、相手にとっては1試合目となる予定だ。

タップしたら全てが終わる。思い残すことはないように戦いたい。
打撃で妥協したくない。戦う気持ちをしっかり持ち続けたい。
体力の限界まで戦いたい。
だって、試合の終わり=選手としての終わりだから。

さあ最後の試合が始まる…